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ヨットの事を考える評議会


by Takatsuki_K
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セーフティー・ハーネス考 序章

3月5日発売の『KAZI』4月号はセーフティーハーネスのミニ特集。
自分でも記事書いているんですけど、ちょっと書き足りなかったのでこちらに補足を書いておきます。

まず、
ハーネスはいつ身に付ければいいのか?
「恐いと感じるかどうか?」は判断基準ではないように思う。
じゃ、どういう基準で身に付けるのか? といわれるとよく分かりません。専門的に研究してるわけではないので。落水したことないし。
でも、ここんところが一番重要なんじゃなかろうかとも思い。じゃ、自分ではどうしていたかというご報告を……。

レース中
インショアのブイ周りレースではハーネスは付けませんよね。最近はライフジャケット着用が最初から義務づけられているケースも多くなっているようですけど。ブイ周りのレースでは、どんなに吹いていてもハーネスはまずつけない。つける必要はないと主張しているんじゃないですよ。自分はつけていないという意味。

じゃ、ロングレースではどうか?
スタートして安定して走り始め、次第に周りのレース艇も少なくなり、日が陰ってきたあたりがハーネスタイムって感じですか。

2000年のケンウッドカップ、最後のオフショアであるモロカイレースでは、スタート後長い真上りのレグが夜通し続きます。もちろん全員ハイクアウト。貿易風のビュービュー吹き。
日が暮れるちょっと前に、隣にいたジョーイ・アレンがすっとハイクアウトから抜け下に降り、全員の分のハーネス持って出てきて配って回りました。
ジョーイ・アレンといえば、ニュージーランドの伝説のバウマンで、この頃はもう最年長クルーだったけど、アメリカズカップもとり、ウイットブレット世界一周レースでも優勝している大ベテランです。それがハーネスつけろと全員に渡すわけ。
このときのスキッパーはケン・リード。今でこそボルボ・オーシャンレースの大スキッパーとなったわけだけれど、この頃はまだ往年のJ24チャンピオンという感じで、オフショアレースにおけるこのての配慮ってものはみじんもなく、「一晩程度のレースならインショアレースのテンションのまま走りきるけんね」という雰囲気でした。
そこでは、誰か「ハーネス付けるぞ」と言い出す係が必要なわけ。このときのチームでそれができるのが、ジョーイだったのです。

ご存じのように、〈エスメ〉チームは国外と国内でメンツが大きく異なります。日本国内のレースでは、ワタシがこの役を担当していたわけですが、同じようなタイミングでハーネス付けるようになってました。別に、「スタート前からハーネスを着ける必要はない」と言っているんじゃないですよ。ワタシらはこうしていたというだけの話。

一旦ハーネスと付けると、おもしろいもので、翌日の昼間もだいたいハーネスは付けっぱなし。必ずテーザーのフックをかけているとは限りませんが、ハーネスさえ身に付けておけば、あとはいつでもフックをかければいいわけだから。

要は、誰かが言い出さないとならないということですな。
じゃ誰が言い出すのか、ということですな。

昨年マレーシアで行われたラジャムダ・レガッタもオーバーナイトのレースなわけですが、これがまた初めて顔を合わせるメンバーばかりで、こういうときが問題です。
レース前、オーナーに「艇のハーネス使えるのか?」と聞いたら、「ダメだ。自分の持ってこい」と言われ、事前に聞いといて良かったと思いました。最近は艇に備え付けのハーネスを使っていたので、久々に古い自分のハーネスを引っ張り出してきて使うことに。

スタートし、夕方になった時点でさっさと自分だけハーネスを着用。
すると、一人だけ若い20才のクルーがワタシの真似してハーネス着けて出てきたんだけど、他のオッサンクルー達は「おー、オマエ、良いのもってるじゃん」というように冷やかすわけ。50代のベテランヅラしたオッサン達に冷やかされ、ずっとOPに乗ってきてオフショアには慣れていない若者としては何となく気まずくなったのか、結局ハーネス脱いでしまいました。
このとき、「このチームはダメだな」と思いましたね。


さてそんなわけで、久々に昔のハーネス引っ張り出してきて使ったんだけど、これ、シンプルで使いやすいなぁと再確認しました。自画自賛。
セーフティー・ハーネス考 序章_f0171353_11483787.jpg

自分専用に自作したものなのでサイズの調整はできないけど、Dリングが3つついていて、薄着のときと厚着のときで使い分けられるようになっている。
ベルトは結構固くねじれにくいので着るときに絡まない。おまけに、表側だけマジックで線を引いてあり、薄暗い中でも裏表がわかりやすいようにしてあります。ベストを着る感じで簡単に身に付けることができるわけ。

テーザーのラインもフックも安っぽいけど、3フックシステム。フックとフックの間隔は75センチ。深く考えてこの長さにしたわけではなくたまたまこの長さなんだけど、長く使ってきてちょうど良い長さだと思う。
3つフックが付いているということは長短2通りに使え、中央のフックをハーネス側に留めれば、2本のエンドを交互にかけて移動もできる。ま、そんな使い方したことほとんどないけど。
使わない時は3つともハーネス側のDリングにかけてしまえば、垂れ下がるのは30センチ程度なので邪魔にならない。

但しこのフック、軽くていいんだけど、シングルアクションなのでお勧めはできません。
普段は、
セーフティー・ハーネス考 序章_f0171353_11492547.jpg

上図のようにしっかり固定されているように見えますが、ぐるっと回って下図のような状態になると簡単に開いてしまうわけで。
セーフティー・ハーネス考 序章_f0171353_11501070.jpg

なぜダブルアクションのフックが推奨されるのか、ご理解いただけるかと。
これも、今回の特集で言いたかったことなんだけど。掲載されないみたいなのでこの場で書いておきます。

また、文中、「テザーのハーネス側が固定されているような製品もあるが、 その場合は専用カッ ターが付属している。」となっているはずだけど、元の文章は、「テザーのハーネス側が固定されているような製品は論外」と書きました。ハーネスラインを留めた船体側が水没した場合、ハーネス側からラインを外せないと溺れてしまうから。
とはいえ、その手の商品を販売しているメーカーに配慮して上記の記載にしたわけですが、ユーザーサイドから考えたらこんなところでケチってどーする? と主張したいところです。ハーネスの中でセーフティーフックのコストが占める割合は高く、安物はどうしてもハーネス側を固定しているようだけど。
軽量化?……クソ食らえでしょう。


レースじゃないときはどうか?
どんなに穏やかでもデッキに出るときはハーネスをつけていました。
レースじゃないってことは、ワタシにとっては回航なんですけど。一人でワッチしていることも多いので、いざとなっても舵をおっぽらかしてハーネス取りに行くヒマはない。
そもそも、舵を持っているときが一番落水の危険が大きいんじゃないかと思うんですね。舵持ったままジブシートを引きこむなんて無理な体勢になることもままあるわけで。そのうえ、デッキには一人しか出ていないわけで……。

したがって、カッパ着るような状況じゃなくても、とにかくハーネスは身に付けカッパは手に持ってデッキに出るというのが、常でした。
これは、恐いと感じる状況かどうかとは全く関係なかろうと思われます。
ここんとこ、特に主張しておきたいなぁと。思うわけです。

そうなると、セーフティーハーネスはシンプルな方がいいなぁと、昨年久々に自作の古びたハーネス引っ張り出してみて思ったわけで。

みなさんはどんなハーネス使ってますか? 使用感はどうですか?

議論の発端として、詳しくは3月5日発売の『KAZI』4月号をご覧下さい。2011年2月号、88頁からも「基礎から学ぶ艤装品ガイド」としてセーフティーハーネスが取り上げられています。そちらも合わせてご覧下さい。
……という宣伝なんですけど。

セーフティーハーネスって長く使えるので、いろんな種類を使いこなした経験を持つ方は少ないと思われ。でもそれぞれの使い勝手はかなり違うと思うし。とはいえ、価格は結構高いので、いざ購入となると、悩む。

ここは一つ、web上で使用感をレポートしあえばどうかなと思うんです。
by Takatsuki_K | 2011-03-01 11:51 | 外洋航海