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ヨットの事を考える評議会


by Takatsuki_K
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ORCグリーンブック

『グリーンブック』というとなんか“エコ”っぽいですが、CO2削減とはなんら関係ありません。ORC(OFFSHORE RACING CONGRESS:外洋レース会議)が出している『ORC Championship Rules』のこと。表紙が緑色なので、昔からこう呼ばれています。

最新版2009年版は、こちらからダウンロードできます。

一言でヨットレースといいますが、今のところ、
ISAFが管理する『セーリング競技規則』に則って行われるヨットによる競争をヨットレースと称する……と解釈されるのが一般的です。
さらにその中でも競技形態は幅が広く、いってみれば短距離走からやり投げまである陸上競技のようなもの。将棋、麻雀、トランプといったテーブルゲームの広がりといってもいいか?

艇はクラス毎のクラスルールや様々なハンディキャップルールで管理されています。
とにかくルール。
競技ですから、明文化されたルールを元にしないと公平には競えないわけ。

じゃこの『グリーンブック』は何か? というと、ORCで管理しているメジャメントシステム(IMS)とそこから導き出されるレーティングシステム(ORC InternationalとORC Club)並びにORCグランプリクラスによる選手権試合のフォーマットを決めたものです。

ORCですから、その昔はIORのレベルレースも『グリーンブック』で行われていました。ワントン、ハーフトン、なんて階級を規定していたのも、この『グリーンブック』。
IMSに変わっても同様。ILC40の世界選手権も『グリーンブック』に基づいて行われていました。

さて、それでは何をもってORCのチャンピオンシップというのか? 2009年版の『グリーンブック』では、
- The Offshore Team World Championship (Sardinia Cup)
- The ORC International Championships
- The Championships of the following classes: ORC Maxi ORC Mini Maxi, ORC 670, ORC Sportboat, GP42, GP33, GP26.
がそれにあたる、と明記されています。
そして、その開催にあたってはこのルールを適用すること、と明記されています。
さらには、地域、あるいは国内選手権でも、このルールを適用することを強く推奨する、となっています。
ジャパンカップも、ORC-IやORC-Cでやるならグリーンブックに従うべし、ということになりますか。

上記大会は、ORCの承認を受けたうえで開催されるものですが、承認を受けるにはいつまでに、どんな書類を持って申請しなけばならないか? 開催クラブの責任は? 等が決められています。
参加者にとってその年の選手権試合が「からぶり」に終わらないように、細かな規定を儲けたということで、まあ、これは当然ですね。
誰も集まれないような場所で勝手に世界選手権を開かれても困るわけですから。

で、『グリーンブック』に「実施要項」と「帆走指示書」のひな形が規定されており、これに沿って大会を行うように。とあります。

実施要項で、スケジュールは、
Day 1,- Registration and measurement
Day 2, - Registration and measurement, opening ceremony
Day 3,- inshore race(s)
Day 4,- offshore race
Day 5,- [offshore race continued] or [second offshore race]
Day 6,- inshore race(s)
Day 7,- inshore race(s), closing ceremony
となっており、オフショアレースは、以下の3つのオプションの中から選ぶようになっています。

a) 20-24時間のオフショアコース。これは途中に通過ポイントを儲け、そこまでの順位でインショアレースの1.5倍のポイント。コース全体の順位で別に1.5倍のポイント。
b) 10-12時間のオフショアレースを2本。それぞれ1.5倍のポイント。
c) 12-18時間のオフショアコースで1.75倍のポイント。8-12時間の短めのオフショアコースで1.25倍のポイント。

いずれも、1本あるいは2本のオフショアレースで、インショアレース1本の3倍の配点ということです。

昔の『グリーンブック』では、ロングオフショアが2オーバーナイト。ショートオフショアが1オーバーナイトだったように記憶しますから、2009年版では距離はずいぶんと短くなってますね。
が、いずれにしても、主催者側の選択肢はかなり狭いということです。


そもそも、アドミラルズカップからして、オフショアとインショアの混成レースですし、自分がシドニーホバートレースに出た時も、インショア何本かと組み合わせてサザンクロスカップというシリーズレースになってました。
ニュージーランドで行われたエア・ニュージーランド・レガッタも、オフショアとインショアの組み合わせ。ケンウッドカップもそうですね。
これは伝統的な外洋レースのスタイルといっていいのかもしれません。
というより、元々はオフショアレースがメインで、それにインショアレースを組み合わせてチャンピオンシップとしよう、という流れだったのかも。

ケンウッドカップも、ハワイ州の島すべてを回るアラウンド・ザ・ステーツレースが単独で存在していたのがそもそもの始まりだったという話ですし、キーウエスト・レースウイークも、元々はフォートローダデールをスタートしキーウエストにフィニッシュするロング・オフショアレースが始まりで、当時はキーウエストにフィニッシュしたあと2日間飲みあかすという、狂ったイベントだったんだそうな。それが今では、キーウエストでのブイ周りレースになっていますが。

ロングオフショア
  ↓
インショアレースと組み合わせてシリーズレースに
  ↓
次第にインショアレースが中心に

となっていき、『グリーンブック』で規定される選手権試合でもオフショアレースの距離が短くなっていったんでしょうかね?
ケンウッドカップも、最後は昔のショートオフショアであるモロカイレースのみになってしまったし。今の『グリーンブック』では、逆に解釈すると24時間以上のロングレースを組んではいけない、とも読めるわけで。

これは何故なのか? は、おいおい検証していくことにして、ここでのポイントは、
「ORCでは選手権試合のフォーマットをグリーンブックでハッキリと定義している」
ということ。だからこそ、どの国で世界選手権が行われても、同じ基準の下で公平に競えるというわけ。


クラスも、
ORC Maxi
ORC MiniMaxi
ORC 670
ORC Sportboat
の4クラスが明記されており、たとえば、ORC670クラスとは、
GPHが618~660で全長が11.41m以上の艇
等と規定されています。
ここも重要。

但し、このあたり、ちょっと前まではIMS50、IMS600、IMS670等のクラスがあったわけで、今では選手権試合はボックスルールのGP各クラスをメインにということなのでしょうか? ORCとしてもこのクラス分けには苦労しているようです。

また、GPクラスのルールは、登場当時は『グリーンブック』に掲載されていましたが、現在は別にルールブックがあるのでこちらには記載されていません。


……と、グリーンブックを見ていくと、今の日本外洋ヨット界に必要なのは、ジャパンカップのルールを決めたルールブック(日本の『グリーンブック』)なのだ、ということに行き当たります。
これが、これまでワタシがこのブログで何回も書いている「ジャパンカップのフォーマット」なのです。

で、それに代わるものが、『JSAF運営規則』の第2章ということなのでしょうが、両者を読み比べてみてください。何が足りないのかが良く分かります。
まずはこれに手をつけるところから、始めるべきであろうと思います。
by Takatsuki_K | 2009-12-29 08:00 | ヨットレースを考える