臨時変更証は便利?
2010年 01月 19日
上図の黒い点線で囲まれた部分が「沿海」の範囲。
「沿海」は岸沿いにずっと続いているので、「沖縄までなら、沿海で行けますよ」というのがJCIの見解のようだが、岸沿いを走るにしても赤線のようになり、「沿海」から出てしまう。
海の上に線が引いてあるわけでも無し、「1時間程度」はみ出るくらいなら多めに見て貰えるような口ぶりではあるけれど、それでも収まらない。
JCIでいうところの「沿海」という航行区域は、ヨットでの沿海航海というものを念頭において設定されていないように見受けられる。
クルージングのみならず、ちょっとした外洋レースを開催しようと思ったらすぐにはみ出てしまうのだ。
となると、その上は「近海」。「近海」で船検をとればいいだけの話だが、「沿海」→「近海」に変更するのはかなり大変だ。
どう大変か、は、また別にまとめてみるとして。
実際には、「臨時変更証」をとれば、簡単に「近海」にできることがわかった。
前回記事はこちら。
これまでは、「臨時航行許可証」をとっていたと思うのだが、「臨時航行許可証」とは本来、船検をとってない船舶が臨時に航行できるようにするためのもので、臨時に航行範囲を変更する場合は「臨時変更証」をとりなさい、ということ。
どうもこのあたりの運用が曖昧になっていたようで、現場でも混乱があったもよう。
「臨時変更証」ならば、ライフラフトをレンタルして、衛星携帯電話を用意すれば「沿海」→「近海」への臨時変更可。
衛星携帯電話もレンタルがある。あるいは、アマチュア無線でもokだそうな。要するに24時間連絡がとれる体制にあれば、高価でレンタル物のないイーパブは必要ない。
臨時の航行区域変更なんだから、レンタルで済ませられないのでは、間尺に合わないし。
なあんだ簡単。
これにて一件落着。
みたいだけど、問題は「臨時変更証」は1年間に30日しか降りないということ。
沖縄-東海レースに出るだけでも、回航まで入れるとそれだけで30日使っちゃう。
秋には八丈島レースを、なんていっても、その年はもう無理ということで。
乱暴にいえば、外洋レースは年に30日以内しか行えないということになる。
さらに、年間30日といっても、隔月で5日づつ……というのはダメらしい。
あくまでも「臨時」に許可するものなので。
ま、このあたり、実際どのように運用されているかはまた別の話として。
そもそも、本来「近海」を航海するのに必要な法定備品が、年間30日以内の航海なら必要ないというのもなんだか解せない話で。「臨時変更証」という制度のおかげで、かえって外洋航海が限定されたものになっているような気もするし、安全に対してのユーザーサイドの取り組みがなおざりになってしまうのではないかとも思う。
今回の沖縄-東海レースでは主催者側でこのあたりを補完し、火薬類やイーパブの搭載を義務づけている。
これ、決めるの大変だっただろうなぁと思う。
世界のヨットレース界にはISAFの特別規定(SR:Special Regulations)というものがあって、これがまた極めて子細にできている。
JSAFでもこれをベースにして日本の事情に特化させた「JSAF-SR」を規定している。
ちょいとこのSRと対比させて、日本の船検制度について改めてじっくり考えてみたい。
(つづく)
追記:掲載した図の沿海区域、だいぶ間違えてます。書き直して近々アップします(2010/2/7)
沿海区域の図、書き直しました。こちら。(20102/9)