妄想、アメリカズカップ
2010年 02月 16日
ご承知のように、第33回アメリカズカップは、挑戦者、ゴールデンゲート・ヨット・クラブ(BMWオラクル・レーシング)の<USA>が、防衛艇<アリンギ5>を下しました。
今回用いられたのはIACC艇ではなく、水線長90ftのマルチハル艇。開催にあたってなにやら裁判沙汰にまでなっており、ここ何十年かのアメリカズカップのフォーマットを大きく逸脱した変則的なマッチでした。
で、カップの移動という大きな出来事になったにもかかわらず、なんだかあたふたとした結末ではあります。
レース開催前、ワタシ自身はなんだか興味を失ってしまっていたのですが、やっぱり90ftのマルチハルの走りは強烈。見れば見るほど「いったいどーなっているのか?」と興味が湧きます。
そこで、勝ったBMWオラクルの<USA>と、<アリンギ5>を比較してみました。
テレビを見ていただけで膨らませた妄想全開。あくまでも酒場のカタフリですが、こういうのがアメリカズカップの面白いところかと。
まず、目についたのが、<USA>のダガーボード。かなり湾曲しています。
これは、水中で水面と平行に近くなる面が出てそこから発生する揚力で船体を持ち上げる効果を狙っているんだそうな。
水中翼船みたいなもんですね。
たしかに映像を見ると、<USA>の左右のアウトリガーはとても細く、その浮力だけで船全体を支えているとは思えない感じ。
艇速20ノットは出ているわけで、おまけにマルチハルですから、ダガーボードの断面も左右対称ではないはず。水の密度は高いのでこんな小さな面積のダガーボードでもそうとうの揚力が発生しているはず。
下図の赤いのがそのダガーボード。
ヒールすればこんな感じ。そして、ヒールすればするほど揚力(青矢印)は上向きになるはず。
しかし、そうなると、リーウエイはどうやって防ぐのか?
で、風下側のアウトリガー(艇体)の水中に没した部分が揚力を発生させているのではなかろうかと思い、目を凝らしてテレビをみたのですが良く分からなかった。でも、おそらく上からみるとこんな感じ?
右は大げさに描いてみたもの。
アウトリガー(の水中に浸かっている部分)は上からみると翼の断面のような非対称型になっていて、このアウトリガーそのものから強力な横方向への揚力(青矢印)を得、リーウエイを防いでいるのではなかろうか……。
と、妄想します。
ヒールして風下側のアウトリガーだけが水中にあるからこそ、の話です。
一方、<アリンギ5>も、同じような湾曲ダガーを持っていたようなのに使っていなかった。通常見られるような真っ直ぐなダガーボードだった。なぜか?
それは、ストレートなダガーボードが無いとリーウエイが大きくなってしまうから……なのに違いないわけで。
となると、結局、ハルから得られる揚力はオラクルの方がずっと大きかったのでは?
と、これまた妄想します。
ワタシの勝手な妄想ですよ。
その上、<USA>のウイングセールは左右にカンティングする(傾かせることができる)ようですから、艇体が大きくヒールしていてもマストは海面に対してほぼ直立しており、非常にパワフルに走り続けることができる。
対して、<アリンギ5>はヒール角が大きくなるとリーウエイが大きくなりセールのパワーも減衰するので、上側のハルがギリギリ海面上に出るくらいのヒール角を保たなければならず、これが極めて難しい。
下図、左が<USA>。右が<アリンギ5>
で、第1レースはオーナー自ら舵を持ち、うまく走れず。上りのレグで<USA>にぶち抜かれる。
しかし、第2レースでは、大型マルチハルの名手ロイ・ペイロンが舵を持った上りレグはかなり良い走りをしていた。
あれは、風が右に大きく振れたから右にいた<アリンギ5>が前に出たということもあるのですが、走り自体も前日よりずっと良かったように思えます。
で、その第2レースも、後半オーナーに舵を代わってからは、やっぱりへろへろと極端に上ったり落としたりしてバランス良く走れていなかった。
結果、ここでも大差がついた。
……ように見えたのですが。みなさんいかが?
んじゃなぜ<アリンギ5>のベルタレッリはこの大事な一戦に自分で舵を持ったのか?
この辺りは、次なる妄想になります。
ラッセル・クーツが<アリンギ>をクビになったいきさつは良く知りませんが、残ったセーリングチームとオーナーとの間も、ちょいとギクシャクしていたんじゃないのかなぁ……と、これまた勝手な妄想を膨らますのであります。
妄想全開の今日この頃。
このように艇の性能やら人間関係やらをあれこれ妄想し酒を飲みながらグダグダ噂話をするというのが、アメリカズカップの面白いところだと思うのですが。
皆さんはどう思いますか?