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ヨットの事を考える評議会


by Takatsuki_K
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限定沿海の混沌

ここまでの話をおさらいすると。

○日本での外洋レースを考えてみた。

○ちょっとしたコースを設定しようとすると船検の航行区域は「沿海」より出てしまう。かといって、「近海」で船検をとるには、大がかりな法定備品が必要。

○臨時変更証を取るという余地が残されているものの、これは年間30日間までの限定であり、そもそも、なぜ臨時変更証なら本来「近海」で必要な法定備品を積まなくていいのか? 説明が付かない。
かえって安全に対する備えがおろそかになるのでは?

○さらにいえば、「沿海」をとる必要もなく、「限定沿海」で臨時変更証でもいいや、、、になってしまうのでは?

              ★   ★   ★

ということで、今日のテーマは「限定沿海」です。

実際、現在の日本のプレジャーボートのほとんどが「限定沿海」なんだそうな。

「限定沿海」とは、前回書いた「沿海」区域のそのまた一部に限定した航行区域のこと。
母港を中心として具体的にどこそこまでと船検証に記載されています。油壺界隈を母港とすると、相模湾と東京湾、南は御蔵島あたりまででしたか。

「沿海」区域の方は沿岸にそって日本全国をカバーしているわけですから、本来は沿岸沿いに走るなら日本一周もできるわけ。
対して「限定沿海」の場合は伊豆半島の先には行けないことになります。岸沿いを走っても、です。
これ、いったいぜんたい、安全上にどういう違いがあるのか?
「限定沿海」で許されるコースである、油壺から相模湾を一気に横断して下田を目指すのだって、海が荒れれば結構な難航海になるわけで、実際、クオータートン・ワールドの際には、相模湾のど真ん中で1隻沈没してますよね。落水で何人も命を落としています。
逆に、「限定沿海」では許されない、下田から西伊豆の港巡りをする航海の方がよっぽど安全だともいえるわけで。
「沿海」を限定することで、法定備品(安全備品)が少なくて済むということに、明確な説明がつかない。

「沿海」と「限定沿海」での法定備品の違いは、何回かに分けて書いてきたのでそちらを参照してください。さらに長さ12m以上になると、EPIRBや無線設備も必要になりますから。艇が大きくなるほど必要設備が多くなるというのも、説明不能。より大きなアンカーを積めというならわかりますが。


さてそこで、今日の本題。
「限定沿海」は「沿海」よりそうとう簡易、とはいいながら、5トン以上なら定員100%分のライフラフト(膨張式救命いかだ)が必要になります。
ライフラフトは、いよいよヨットが沈没するという時に必要になる装備なわけで、ならばより小型のヨットの方がライフラフトの必要性は高いとも考えられるのですが、同じ海域を走るのに5トン未満のヨットならライフラフトは必要ないとする意味がまず不明。

ここでいう「5トン」とは総トン数のことで、重さではなく船の容積。ヨットは複雑な形をしているので容積なんて測るの大変そうだけど、長さや幅に係数をかけて算出します。同じ全長でも細身の艇は総トン数が小さくなります。5トンというとだいたい30ftを超えたあたりでしょうか。

実際、定員分のライフラフトとなると、価格が高いということはさておいてもとにかく重くてかさばりますから、小型の艇では収納場所にも困りますね。
30ft艇でも最大搭載人員12人なんてすぐ降りると思うので、これで12人分のライフラフトを搭載となるともう大変。

6人乗りのライフラフトで約40kg。大型スーツケースより一回り大きいかな。価格は40~50万円。これが2つ。
40ft艇でも搭載場所に悩む。

そこで、救命浮器でも可とされます。
膨張式の浮器なら6人用で2.1kg。8万円くらい。小さめのアタッシュケース大の大きさですから収納場所にも困りません。

ただこれ、ワタシは開いてみたことが無いのですが、写真で見る限りかなり心細い物体です。ライフラフトで漂流したことはあるのですが、浮器があの代わりになるとは到底思えない。
ライフジャケットで浮いている間、乗員がバラバラにならないためにしがみつく感じでしょうか。
だったら、特別に浮力のあるバースクッションでもしつらえて取っ手を付けておいた方が良さそうな気もする。

定員の100%のライフラフトが必要
と書いておいて、
浮器でもいい
とお茶を濁す書き方に、安全を求めるという本質が根底にない制度であることが垣間見えるのです。

さらに驚くことに、「限定沿海」の場合、有効な信号設備を備え付けていれば、浮器も不要になります。

有効な信号設備とは、ガイドによれば以下のものをいいます。

「EPIRB 」、及び「持運び式双方向無線電話装置」、「漁業無線」、「マリンVHF(16ch 付)」、「国際VHF 」、「ワイドスターマリンホン等(自動追尾機能要)」及び「インマルサットミニM 、fleet F33 、fleet F55 」、「イリジウム(国内でイリジウム無線局免許を取得した電機通信事業者のものに限る。)」


うーむ。ワカラン。意図することがまったくワカラン。
無線機があればライフラフトはいらないとする根拠がまったくワカラン。
ライフラフトが必要なのは、ヨットが沈んで退船する状況なわけで、ライフラフトの代わりに無線機があってもどうするの?
by Takatsuki_K | 2010-03-09 09:57 | ヨットレースを考える