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ヨットの事を考える評議会


by Takatsuki_K
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氷の寿命

『KAZI』2011年4月号の「よろず相談所」記事を書かせていただきました。
テーマは、食料の備蓄。
クルージングと一言でいっても長短さまざまあり、話が絞りにくいのですが、ここでは「連休をフネで過ごす場合の……」ということでした。
まあ、連休クルージングだと、夕食は陸に上がって地元のお店で海の幸を堪能ってことになるんだろうから、フネで食べる食事はオマケなのかな? いや、走るフネの上で飲み食いするのもまた楽しいですよね。

そういや昔、太平洋横断中に氷が1週間くらい保ってえらく重宝したなぁと思い出したんだけど、はて、何日保ったんだっけ? 記事にするなら正確に書かないとと思い、航海日誌を探したんだけどこの時の航海のものは見つからず、書くのをあきらめました。

その後、というか3日ほど前に、自宅でヨガをやっていて、グリーっと体を伸ばしたときに目の前の本箱を見、おや?と気づいた1冊のノート。おっとこれは……。突然そのときの航海日誌が出てきたわけで……。

    ※   ※   ※

1991年。4回目のハワイ→日本の航海で、スワン59という豪華なクルージング艇。日記を見ても、準備の段階から余裕ですね。

買い出しは細かなリストなんぞ作らず、メモを元に量は勘で。もう毎年のようにこのコースを走っていたので、だいたい想像がつく。
コツは1度ですべて終わらせようとしないこと。何度かに分けて、買ってきたものを艇内に整理していきながら、足りない物をメモしまた買いに行くと。
帰着後食料が大量に余るとヨットを降りた後もそれを食べなきゃならなくなるので、量は必要最小限に留めてますね。
ま、ケチってことか?

……と、食料の積み込みは慣れたものだったのですが、この艇には立派な冷蔵庫と冷凍庫がついていたんです。なんたってスワン59ですから。
さて、どうするか。初の試みとして、冷凍食品なんか買い込んでみちゃう? と悩んだ末に、このてのものは信用しないことにしました。
といっても完全に無視するのももったいないので、冷凍庫には氷を大量に詰め込んでいくことに。アイスキューブというんですか、そのままコップに入れられるサイズのやつ。アメリカだと、枕くらいの大きさのでっかいビニール袋に入って売ってますよね。あれ。あれを冷凍庫に入るだけ詰め込んで、いざ出港。

6/22 1030 ハワイ ケイヒラグーン出港 -------------
長距離航海では、夕食は全員揃って食べ、食べ終わったらワッチ交代することにしています。その時、ぬるいビール(ぬるビーと呼ぶ)をありがたく飲んでいたわけですが、今回はここで氷入りのカクテルを飲むなんて、なんたる贅沢。

ところが……。

6/24 フリーザー壊れる -----------------------------
なんだよまったく。2日でこれか。
やっぱり冷凍庫なんて信用しなくて良かった。
まあ、氷が溶けるまでカクテルを楽しもう。
ということで、航海日誌を見ると、オリーブ入りのマティーニだとか、タバスコ生ライム入りのブラッディマリーだとか、なんかいろいろ材料を買い込んであったようで、おまえらマジメにフネ走らせろよ、という感じ。トロピカルドリンクなんて流行っていたの、この頃だったっけ?

その後、

6/27 パンはあまり長持ちしない。もうかなりカビがはえてしまった。氷はまだ元気がいい。---

なんて記述があり、

7/1 日付変更線通過 --------------------------------

そして、
7/4 とうとう氷が完全に無くなった ------------------

出港から12日めですね。冷凍庫が壊れてから10日ということですか。

そしてその後、

7/15 0840 小笠原 二見港入港 ---------------------
 ハワイ→小笠原 22日間の航海ということになりますな。
 そのうち、12日間は氷入りのカクテルを楽しめた、と。

7/17 0530 二見港出港 -----------------------------

7/21 0040 淡輪入港 -------------------------------

めでたしめでたし。

いわゆる角氷ではなく1つ1つが小さなキューブアイスですが、たんなるアイスボックスではなく冷凍庫に入れて、出港時には冷凍庫自体が完全に冷凍状態にあったからゆえの長持ちだとは思いますが。

それにしても12日間、貿易風に吹かれ気絶するほど美しい夕陽に包まれて氷が入ったカクテルが飲めるなんて。
と、同時に、長距離航海では、冷蔵庫、冷凍庫に期待してはいけないということか。まあ、冷蔵庫なんかなくてもどうにかなりますね。

但し、長距離航海というより長期間航海──つまり、ヨットの上で生活するような場合、やっぱり冷蔵庫はなくてはならない強い味方です。

ワタシとしても、この後、ニュージーランドでタウンソン34という古い木造艇で生活していたわけですが、中古で買ったときから付いていた冷蔵庫はきわめて有用でした。
1993年から2000年まで7年間乗っていましたが、途中一度もトラブル無し。朝夕20分ほどバッテリーチャージでエンジン回すわけですが、この時に冷蔵庫用のコンプレッサーも繋げばOK。
密閉容器に水を薄く張りちょっと長めにコンプレッサー回せば氷もできる。他のものも氷ってしまうことがあるので、ちょっとコツがいりますけど。
こうして手塩にかけて作った貴重な氷を入れて飲むカクテルがまた、良いんだなぁ。ヨットの上の氷って、ありがた~いものですよね。
by Takatsuki_K | 2011-04-12 10:47 | 外洋航海