前略 アルキメデス様
2011年 07月 26日
まあ、今更……なんですけど。
四角い箱が水に浮いています。
水面下では箱全体に水圧が働き、これが浮力となります。
浮力は、水に沈んでいる部分の体積に相当する水の重さと同じ。
アルキメデスの原理ですよね。
そして、浮力の作用点(浮心)は水に沈んでいる部分の容積中心にある。
これは断面なので、面の中心(重心)。四角なので、そのど真ん中ということになります。
ここで、Twitterである方のつぶやきを見ていて、水中で受ける水圧はどの部分でも同じだよなぁと勝手に思っていたことに気がついたワタシ。上図の赤矢印のように。
これは違いますよね。
水圧は水面からの距離に比例して大きくなるので、この箱が受ける水圧はざっと下図のようになるはずで、
水面からの距離をヘッド(水頭)というんだそうな。
うーん、大学で習ったはずなんだけど、まったく覚えていません。ワタシ、船舶工学科だったんですけど。オハズカシイ。
……となるとですよ、浮力の中心はもっと下の方にあってもよさそうなもんだよなぁ、と、上の図をイメージして唐突に思ってしまったわけです。
改めて、バカですまんす。
左右の壁にかかる水圧は横向きで、お互いに相殺しあうので、この箱にかかる上下方向の水圧は底にかかっているものだけ。上辺は水面上にあるので、水圧はゼロ。
よって、水面と底のちょうど中間部分に浮力の中心があって当然ですよね。
じゃあ、この箱が潜水艦のように完全に沈んでいたらどうなのか?
一辺が1の箱だとして、水深2の地点に沈んでいるとすると、
箱の上辺にかかる水圧は1。底にかかる水圧は2。差し引き 1の浮力があることになる。
この箱の重さがちょうど1ならそこで静止し、1より重ければ沈んでいく。
つまり、沈む物にも浮力はあるってことですよね。
上辺にかかる水圧と下辺にかかる水圧の差が浮力になる。
浮力はあるけど、それより重いから沈んでいく……と。
水深が深かろうが浅かろうが、上辺と下辺の差だから、どこででも浮力は同じ。
たとえば、水深100の地点なら水圧は100ですが、それでも、
底(100)-上(99)=1 で、浮力はやっぱり1
ただし、水深2の地点では底は2で上辺は1だから、底辺には上辺の2倍の水圧がかかっているが、水深100の地点では100と99だから、1.01倍の違いしかない。
話を戻して、
逆に、重さが1より軽ければ、この箱はここに留まっていられず、浮いてしまう。
仮に重さが0.5なら、底にかかる水圧が0.5になるところ──つまり、水深0.5の地点で浮かんで力が釣り合っている。
ということは、底の面積が半分だったら、水深が2倍の1のところまで沈んでやっと釣り合う。
なんかバランス悪そう。
で、ひっくり返ると、こう。
底の面積が元の倍、2になったので、水深は半分の0.25で済む。
まあ、これを漠然と言えば、
「その物体がおしのけた流体の重さと同じ大きさの浮力を受ける」
というアルキメデスの原理になるわけだけど。受ける水圧ということから考えると、こう説明できるということですよね。
例に挙げたのは四角い箱なので、横の壁面にかかる水圧は浮力にはならない。「屁の突っ張りにもならない」とでも言えばいいのか。船を潰す力になるだけで、浮力にはなんら関わっていない。
単に、底の面積と吃水を乗じたものが浮力になる。
そして、浮心はその中間地点にある。
まあこれは壁面が垂直になっている四角型だからなのですが、形が変わればもっとヤヤコシクなってきて、たとえば、ちょうど半円の部分が水面下に沈んでいる物体がこれ。
やはり水圧は水深が深くなるほど大きくなるのですが、水圧はその表面に直角に働くので、矢印の向きはこうなります。
底の部分以外にも、上向きの力(浮力となる成分)が加わっていることになりその総和が浮力となり、ベクトルを合成すれば、浮心が求められる。……わけだけど、それが「容積の中心」ということですね。
図は断面なので面積の重心。
半円の重心を計算で求めると、幅が1(半径0.5)だとすると、
4×0.5/3π=0.21
円の中心から0.21下の点が浮心となります。(図の赤丸)
計算で求めたのでは「ハイハイそうですか」ということになってしまうので、なんとか作図で求められないものか?
作図で求めれば、「なぜ容積の中心が浮心になるのか」もっと合理的に説明できそうなんだけど。
……ダメ、難しい。
なんか名門中学の入試試験とかに出てそうだけど。
いやこれ、台形だとしても、作図で重心を求めるの、結構難しいなぁ。
以上、話がヤヤコシクなるので、それぞれの数字に単位は無し。さらにいえば、浮力には水の密度も関係しているのですがそれもすっ飛ばしました。
なんでヨットは浮いているのか? アルキメデスさんの偉大さをオモンバカリつつ、改めてデッキの上にいる夏休みというのも、これまた感慨深いもので……。
前略 アルキメデス様
暑中お見舞い申し上げます。