IRCとオプティマイズ
2008年 06月 18日
ハンディキャップの数値を1つしか持たないシングルナンバーのハンディキャップ制度の下でも同様の事が起きます。
強風下でも軽風下でも同じハンデ値を用いるわけですから、
○強風下では、
実効水線長が長く復元力が大きい艇が有利
○軽風の日には
軽くてセールエリアの大きな艇が有利
になります。
水線長が長い、排水量が軽い、セールエリアが大きい、復元力が大きい、といった要素はいずれもハンデ値を高める要素です。
最終的に同じハンデ値にするためには、どれかの要素を大きく取り、どれかを少なくする、という選択肢があるわけで、結果として、同じハンデ値でも、軽風向け、強風向け、上りに強い、追っ手で速い、といった性格の違う船ができるわけです。
大きな大会は何レースも行う事でそうした有利不利は薄まる事になるわけですが、それでもその地域と開催時期によって風速の傾向がありますから、船を設計する段階から目標となるレガッタを決めてデザインされ、オプティマイズされていきます。
さて、ここで。こうした要素の中から、「軽量」という事を考えてみます。
軽風下では艇体重量が軽い方が有利なはずです。同時に、船が軽いという事は、強風下でもやっぱり有利なわけです。
また、軽量化の為に復元力が小さくなってしまい、強風下では大きなセールを展開できないとしても、重量が軽いということは駆動力が少なくても同じスピードが出るという事ですから、やっぱり軽量というのはメリットがあります。
あとはハンデ値とのバランスの問題になります。
おまけに、強風時にヒールを起こしたりデパワーしたりするのはいろいろ方法が考えられますが、微風時のアンダーパワーはどうしようもありません。
という事で、シングルナンバーのハンディキャップ制度の下ではどうしても軽い船が有利になってしまいます。
で、これまでのシングルナンバーハンディキャップでは、内装のコッテリしたクルーザータイプの艇のオーナーから、
「重い船では勝てない」
という苦情が出ていたわけです。
IMSでは、風速、風向によってハンデ値を変えるという方法でこの問題を回避しようとしたわけですが、その結果はまた別に書くとして、……IRCです。
どうもIRCでは、こうした「重い船の軽風下での不公平感」をどうにかするハンデ値になっているのではあるまいか、
そこが世界的に受け入れられている理由なのではあるまいか、
と、想像するのですが、どんなもんでしょう?
今、ジャパンカップに向けて、内装を取り払って軽量化し計測を受け直しているレーサー/クルーザーがあります。
IRCのテクニカルコミティーは、このオプティマイズ行為に対してどういう対応を見せるのか。かなり注目しています。
ワタシの個人的な意見としては、このてのオプティマイズ行為を認めてしまっては、IRCの評価は一気に下落すると思います。
懲罰的なキツイハンデを付加するべきだと、個人的には思いますね。
じゃないと、みんなこうした無意味な改造をしなくてはならなくなる訳ですから。
このあたり、意見が分かれるところでしょうが、みなさんはどうお考えですか?